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巧匠堂 吉水快聞

巧匠堂の活動

巧匠堂では、東京藝術大学大学院で文化財保存修復について学び、博士号を取得した吉水快聞が中心となり、
彫刻文化財の保存修復にも携わっています。

日本の文化財について

文化財とは人間の文化活動の結果として生み出されたもので、有形・無形に関わらず、文化的価値を有するものとされています。
文化財の視点からみて、世界においても日本は奇異な国ではないでしょうか。例えばギリシア・ローマ・中国といった国の文化財の多くは、後世発掘された「出土品」です。しかし、日本では多くが正倉院の宝物からもわかるように「伝世品」なのです。
また、彫刻文化財である仏像に目を向けると、日本人は、長い歴史の中で石や金属に比べ非常に自然環境や人為的影響を受けやすい材料である“木”を選択し、それを膨大な労力をかけて守り伝えるという一見矛盾した行為を繰り返してきました。これは時間がつくりだした美の変化、朽ちた様や古びた様に畏敬の念をもつ、いわば「時の美」というものを認めてきたからではないでしょうか。
日本の文化財は長い時間の中で育まれ、人から人へと大切に守り伝えられてきたのです。

文化財保存修復について

文化財保存修復は文化財のお医者さんと言われます。像の状態をまず調査し、調書をとります。次にどのような処置が好ましいか判断、提案。そして、修復方針が決まれば適切な処置を施します。可能であれば再発防止のための環境改善を提案し保存に努めていきます。
現在、日本の文化財保存修復は“現状維持”が原則です。今適切な処置を施さなければ、その文化財は消滅してしまう。そこで保存修復を通し、過度に手を加え文化財の美を再編するのではなく、今日まで受け継がれてきた文化財を“適切な状態”で次の世代に送る作業が“現状維持”なのです。
しかしここで問題となるのが、日本における彫刻文化財のほとんどは仏像であること。仏像は文化財としての美術品である以上に、宗教の礼拝対象、信仰の対象なのです。ゆえに単に美術品としてだけでなくそれらが宗教的な畏怖の念、民間信仰的な禁忌をもって守られ、現在に伝わっているという歴史的宗教的背景の重みをしっかりと受け止め、みつめなければならなりません。仏様が指を怪我なさっていれば、治療して差し上げたいと思うのは当然のことではないでしょうか。現状維持が必ずしも拝む側にとって最良であるとは限らないということもしっかりと考慮しなければいけません。重要なことは、依頼者や知識人らとしっかり相談し修復方針を立てる。そして、それぞれの像にあった修復を心がけることです。さらには、もし将来、価値観が変わり、今施した処置が、良くないと判断されたときにやり直しの効く修復“可逆性”も大切にしなければいけません。

作家は一流の修復家か

文化財保存修復施工者は、美術史的知識はもちろん、それを生み出した作者並み、もしくはそれ以上の技術と技法を習得している必要があります。その上で、修復施工者はいかに対象となる作品を生み出した作者の気持ちになれるかが重要です。「彼らがどうして欲しいのか」それを読み取らなければいけません。そこに作家にとって最も大切な“我”というものは必要ありません。ともすれば、作家と修復家は相反するものかもしれません。一流の作家が、一流の修復家とは限らないのです。

未来へ託す文化財

文化財を作るのも守るのも、そして壊すのも人間です。そうであるからこそ、鍵を握っているのは“現在の私たち”であると言えるでしょう。
文化財を通じて、私たちは過去の人間の生活や風習、文化などを学ぶことができます。そして彼らに触発されながら、新たな文化を創造していけることでしょう。
文化財保存修復は、各時代に生きた人々の「英知・文化の所産」というバトンを過去より受け取り、未来へとつなげることなのかもしれません。巧匠堂はその一助になればと考えています。

文化財修復事例

  • 蓮花寺(奈良)地蔵菩薩立像
  • 専念寺(奈良)地蔵菩薩立像
  • 香合佛
  • 菊水楼(奈良)森川杜園作 鹿
  • 法雲寺(奈良)阿弥陀如来坐像
  • 木造 獅子頭
  • 西光院(奈良)阿弥陀如来坐像
  • 極楽寺(奈良)阿弥陀如来立像
  • 達中寺(奈良)阿弥陀如来